ニュージーランドの自然が美しい 5つの理由(vol.2 自然史編)

なぜこんなにニュージーランドの自然は美しく人々を感動させるのでしょうか?
他にも素晴らしい自然の国はありますが、ニュージーランドは他の国とは何が違うのでしょうか?

エリア紹介やランキングなどは他サイトでもありますので、当ブログでは別の切り口で、コラム風にニュージーランドの自然について深く迫ってみたいと思います。

世界各国65カ国以上を訪れた私が、なぜニュージーランドの自然がこれほど素晴らしいのかを、5つの理由から検証してみました。

1;ニュージーランドのロケーション
2;ニュージーランドの自然史
3;島国のニュージーランド
4;人々の自然への意識
5;人口が少ない国

今日は2つ目の「ニュージーランドの自然史」についてお話しさせていただきます。自然科学や歴史学のような難しい話ではなく、簡単にご紹介してますので、どうぞご覧ください。

The New Zealand Journalより抜粋

世界で最も古い島

遥か太古の昔、今から1億3千万年前の南半球には、現在のアフリカ、南アメリカ、南極、オーストラリアの大陸とインドがひとつになった、ゴンドワナ大陸という名の、超大陸がありました。ティラノザウルスがいたのが約6500万年前なので、それよりもずっと前の話ですね。

その後、地殻変動を繰り返しながら、約6000〜8000万年前に、ニュージーランドは大陸から分岐された言われています。(数字が大きすぎるために思考が止まってしまう方は、年を¥に変えてみましょう。どのくらい昔かのイメージがつきやすくなります)

The New Zealand Journalより抜粋

これほど古い島は、世界でも稀で、ニュージーランドは世界で最も古い島のひとつだと言われています。ちなみに、日本列島がアジア大陸から分岐したのが2000万年前と言われています。

ひとりぼっちの淋しい島

長く見積もって約8000万年もの間、ニュージーランドは他の島や大陸とぶつかり合うことなく、周りは海に阻まれ、地理的に孤立した状態で今日に至っています。
分岐したばかりの頃は、今よりもずっと大きく、ひとつの島でジーランディアと言われています。現在のほとんどは海の中に沈んでしまいましたが、地理学者の中には、海の中にあっても構造上は大陸と呼ぶべきという人もいます。

その後、ニューカレドニア付近から南下しながら、250万年前に太平洋プレートとインド・オーストラリアプレートの活動で、現在の北島と南島が生まれました。

日本は、2000万年前にアジア大陸から離れましたが、距離が近いために、氷河期は海が凍って実際には繋がっていました。最終氷河期の終わりが1.5万年前なので、今のように日本列島が完全に島になったのは、ニュージーランドの歴史から見ると、つい最近の出来事のようです。

私のガイドトークでは、分かりやすく「ニュージーランドが8000歳のおばあちゃんで、日本は1歳半の赤ちゃん」と言っています。

のんびりマイペース

この地理的に隔離された小さな島は、大陸のように様々な種の進化が激しく進むことなく、外部からの侵入者に阻まれることもなく、ニュージーランドだけ時が止まったかのようにゆっくりマイペースで生態系の進化が進んでいきました。

他の国のもの比べ、ニュージーランドの原生林は、まるでタイムスリップして恐竜がいる森にいるかのような錯覚に陥るほどです。また、ニューカレドニア付近から南下したこともあり、シダ植物などの熱帯のような植生も見られます。これが太古の森と言われる理由なのです。手付かずの自然という意味だけではないんですね。

何も知らずにただニュージーランドの森の中を歩くと、日本にでもありそうだなと感じるかもしれませんが、少しでも学ぶと全く違ったものに見え、より感動が深くなりますね。やっぱりガイド付きで歩くと別物です。(ここで宣伝してすいません…)

鳥たちの楽園

The AM Show ; Image – Getty

世界には他にも島はたくさんありますが、ニュージーランドが現在の姿になる過程で、ある奇跡が起きます。それはなんとこの島に哺乳類が存在しなかったのです。正確には2種類のコウモリはいたのですが、ネズミなどの小動物さえも全く存在しなかったのです。

温暖な気候で、自然に恵まれ、動物が住みやすい環境にもかかわらず、もともと哺乳類がいなかったというのは、奇跡と言わざるを得ません。同じ島国でも、あらゆる動物が生息する日本と比べると驚きです。

哺乳類がいなかったおかげで、ユニークな進化を遂げたのが鳥類でした。他の国の生態系で哺乳類が担う役割を、ニュージーランドは鳥類が行っていました。土の中のミミズを食べるモグラの代わりにキウイバード、草食動物のように草を食べるタカヘなどがその例です。

また、猛禽類が少なく、鳥類の中での捕食関係が緩やかだったため、鳥たちはテリトリーを分け合いながら、平和に暮らしていたと言えます。まさに鳥の楽園。キウイバードのような飛べない鳥が多いのもその結果ですね。

このユニークな生態系のおかげで、現在は88種類の鳥類がニュージーランドで繁殖していますが、そのうちの66種類はニュージーランド固有種で、世界でこの国にしか存在しない貴重な鳥なのです。

漂流者たち

The Encyclopedia of New Zealandより抜粋

約8000万年もの間、周りの世界から隔絶され、ゆっくりとマイペースに、そして外部からの危険に脅かされることなく平和に進化してきた楽園に、世紀を揺るがす大事件が起こります。

なんと哺乳類がほとんどいなかったこの島に人間がやってきたのです。先住民マオリ族の移住です。これは約1000年ほど前に始まったと言われています。日本では平安時代中期、キリスト誕生が2020年前、エジプトのピラミッドが4000年以上前と比較すると、マオリがやってきたのはそれほど古い出来事ではないのが分かります。マオリが原住民ではなく、先住民と呼ばれるのはこのためなのです。

マオリが住むようになって、この島の自然は転換期を迎えます。哺乳類がいなかったため、鳥たちがマオリの狩猟の的となり、一例では、最大の鳥であったモア(ダチョウよりも大きい飛べない鳥)は5〜600年間の間にマオリに食べ尽くされてしまったと言われています。

1642年にオランダ人のエイベルタズマンが、ヨーロッパ人で初めてニュージーランドを発見し、1769年にイギリス人のキャプテン・ジェームズ・クックがヨーロッパ人で初上陸を果たしました。人間住み始めてから、ニュージーランドの自然が激変し危機に瀕していくのです。

現在の姿へ

そして、1840年のワイタンギ条約で、マオリからイギリス人へ統治が譲渡され、人口の爆発的増化と共に、森林は伐採され、外来の動植物が持ち込まれ、ニュージーランドの自然の破壊が急速に進んでしまいました。

8000万年間大切に守られてきたニュージーランドの自然が、1000年前のマオリの到来から劇的に変化しました。私のガイドトークでは島国になってからの歴史の長さが8kmだとしたら、マオリ到来してからの歴史の長さはたったの1cmとお話ししています。わずかその1cmでニュージーランドの自然が大きく変わってしまったのです。

そのため、現在のニュージーランドは自然保護の意識がとても高く、そのおかげもあって、私たちがこの大自然の美しさに感動できるんですね。

歴史を紐解いていくと、ユニークな生態系と人間の過ちからの反省で、この国の自然の美しさが保たれているんだなと教えてくれます。

次回は「島国のニュージーランド」島国ならでは自然の貴重さをお話しいたします。お楽しみに!

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