ガイド付き旅行のススメ その2

ここでのガイド付き旅行のススメは、海外へ個人旅行をしたいと思っている方向きの記事となります。インターネットなどを駆使して情報を集め、自力で計画し手配して、旅行会社に頼らず海外個人旅行をする方が増えてきていますね。

行ったこともない外国への旅行を自力で成し遂げた達成感や満足感は素晴らしいです。しかし、要所要所でガイドを手配することによって、より深い感動ある旅ができますよ」というアイデアを提供していきたいと思っています。

前回の記事で書いたように、知らない事を知らないで終わってしまうもったいなさをどうしても感じてしまいます。ニュージーランドに限らず、現地をもっと深く知って旅をして欲しいなという、極めて勝手なガイドの主観です
長くなってしまったので、ご興味があればこの先もどうぞ。

旅行会社なんていらない!ツッパていた学生時代

不真面目な貧乏学生の見本のような7年間の大学生時代(ハイ。留年しまくりました)、世界中をバックパックを背負い、カメラを片手に旅をしました。バックパッカーという言葉が生まれる前の貧乏旅行というやつです。

ニュージーランドへワーキングホリデーに来る資金なんて溜まるはずもなく、留学なんて夢の話。とにかく物価の安い国ばかりを旅していました。
円高が深刻だった90年代半ば、日本にいるよりもアジアのどこかで旅をしている方が生活費が安くついたんですよね。今となってはいい時代です。

その頃は、海外貧乏旅行が一部の大学生を中心にブームになっていて、貧乏な旅行しなくていいのに、あえて貧乏旅行を楽しむいいとこの子に違和感を感じていたものです。

そんなハングリーで世間知らずだった私は、「旅というものは己の力で成し遂げるもの。旅行会社なんてクソ食らえ!」とぐらい思っていたものでした。

忘れられないガイドとの出会い

そんな私がバックパッカーの旅で初めてガイドをつけたのが、ネパールでのトレッキング。日本である程度の山は登ってきたし、地図さえあれば自分で行けると思っていましたが、「ガイドを付けないと山賊に襲われるかもしれない」という脅しに負けて、現地でガイドを雇うことになりました。

「本当は要らないのに」「目的はガードマン」という気分で、一緒に一週間ほどのトレッキングの旅が始まりました。当時ネパールのトレッキングガイドにはランク付けがあって、当然安いガイドはまだ経験が浅い。貧乏だった私は当然一番低いランクのガイドを選ぶことしかできませんでした。

期待はせずにツアーが始まりましたが、愛嬌ある彼の笑顔、心からの親切心、ヒマラヤとネパールを愛する心、素朴だけれど強い意志を持った姿、当時の自分にとってはカルチャーショックの毎日。日本という国で恵まれて育った自分と、貧しいネパールで生きる彼とを対比したり、ヒマラヤの山岳少数民族に暮らしぶりを学んだり、彼の友人に会えわせてくれたり。毎日がドラマティックな日々の連続だったのです。

トレッキングの途中で体調を崩してしまった時も、優しく看病に努めてくれました。ガイドの彼に、ガイドとお客さん以上の関係を感じ、当時の私に生きるための知恵をも教えてくれたように思いました。

そのトレッキングで強烈な思い出として残っているのは、美しいヒマラヤの山々ではなく、彼や彼が会わせてくれたローカルの人々の美しい心。やはり旅での感動は人との出会いなんだと再認識させてくれた旅でした。

その後、いくら貧乏旅行でも、必要と思ったところではガイドを付ける費用も惜しまないようにしようと決めました。ネイチャーガイド、遺跡でのカルチャーガイドなどの出会いによって、私の旅がより深いものとなり、旅をする毎に自分自身の心が豊かになっているのを実感しました。

鳥肌が立ったプロガイドの演出

感動したガイドの思い出をもうひとつ。

今度は自分がガイドになって、旅を通じて人々の心を豊かにするお手伝いをしたいと、旅行会社に就職し、添乗員としてスペインに訪れた時の話です。

マドリードのソフィア王妃芸術センターで、ピカソのゲルニカを見ました。

絵画にあまり興味もなかったのですが、仕事ということもあり、ガイドさんの話はちゃんと聞いていました。ロバートキャパが好きでしたので、絵を見る前に熱く語ってくれたスペイン内戦の話はスッと頭に入ってきました。ガイドさんのストーリー立てたトークも上手だったのを覚えています。

壁にかけられた大きなゲルニカを見るために、絵の中心から数メートル離れた床に貼られたテープに爪先を合わせてじっと見つめます。絵の一部分を見るのではなく、大きく見るといいとアドバイスをいただきました。そしてゆっくりと絵の細部まで見ていくように言われました。

お客様たちが終えた後、ひとり残って、ガイドさんに教えたれた通りにやってみました。
テープに立ちゆっくり大きく眺めたその瞬間、館内のざわめきが消え、サーッと鳥が肌が立ったのです。そして細部に目を移すと、内戦で呻く人々の声が聞こえてきたんです。体じゅうの血管が湧き立つような気持ちになりました。

ピカソのような天才の絵なんて、素人の自分が判るはずもないと思っていたのですが、身体の奥から湧き立つ感動を覚えたのです。まさに岡本太郎の「芸術は爆発だ!」の心境でした。

もしあの時に、ガイドさんの解説なしにゲルニカを見ていたら、今でも私にとって、凡人には理解できない天才の奇妙な絵で終わっていたのかもしれません。あまりにも黒子に徹していたガイドさんだったので、顔も覚えていませんが、ゲルニカから感じた爆発的な感動は今でも鮮明に覚えています。

いいガイドの選び方

旅をしていて、どうしても自分の力だけでは得られない感動を提供してくれる、そんなガイドを付けて旅をすることをおすすめしたいです。

せっかくガイドを付けたのに、あまりいいガイドではなかったという経験をされた方もいらっしゃるでしょう。私にもたくさんそのような経験はあります。
経験がなさすぎる、知識が少なすぎる、ホスピタリティーがない、意外とあるのが、人としての態度がなっていない、など。
ガイドを始めたばかりの人の、経験や知識の不足は致し方ない部分ですが、人として不快感を与えるようなガイドはニュージーランドにはあまりいないと思いますのでご安心ください!

では実際にどんなガイドを選べばいいのでしょうか?
自分なりに考えてみましたので、参考にしてみてください。

  • ツーリズムマインドを持っているか?
  • その土地を愛しているか?
  • ホスピタリティーを持っているか?
  • 本業でやっているか?
  • ルールに則って業務を行っているか?

ツーリズムマインドを持っているか?

こういう言葉あるのかないのか知りませんが、私はツーリズムマインドというの言葉を大切にしています。ツーリズムとは何かを深く理解しているか?自身のツーリズム哲学があるか?
ツーリズム産業、それに携わるローカル、それに従事するスタッフひとりひとり、そしてお客様。全てがWin&Winの相互関係でいられることを意識して取り組んでいるかというのは、この仕事をするのに大切なマインドだと思っています。
どこで判断するかは難しいところですが、ウェブサイトやブログ、SNSなどでカラーが出ると思いますので、そこで判断するのもいいかもしれません。

その土地を愛しているか?

当然のことですが、その土地やローカルを愛せないと、その素晴らしさを伝えることはできません。SNSやブログ等で情報発信しているガイドでしたら、その度合いも感じられるかもしれませんね。

ホスピタリティーを持っているか?

海外のツアーガイドの中には、日本語ができるからという理由だけでガイドをしている人も少なくありません。「自分の住んでいる街を連れていくだけで稼げる」という軽い感覚でやっているガイドです。
お客様にお代金を頂戴する以上は、しっかりとホスピタリティー(日本語でいう、サービスや接客業で必須の、誠意あるおもてなしやマナー)を身に付けた方にお願いしたいですね。
手配を依頼した時のメールの対応などからも判断できるのではないでしょうか。

本業でやっているか?

残念ながら、まだまだ社会的地位の低いツアーガイド(私はこれを変えていきたい!)。それほど稼げる職業ではないために、本業でやっているガイドは大変なのが現実です。もちろん副業でやっているガイドでも素晴らしい人はたくさんいますが、この職業に誇りを持ち、天職だと思ってやっているガイドからは伝わるものも大きいではないでしょうか。

ルールに則って業務を行っているか?

ニュージーランドでは、お客様を車に乗せてガイドするサービスをするためには、そのサービス業務をするための免許と商業車用車検、そしてドライバーには2種免許が必要です。また、国立公園内のガイドには環境省からの許可も必要です。
ネット上では、名目上お友達となって、これらの許可を持っていなくても、自家用車で送迎サービスをしたり、国立公園内を案内したりするガイドもいます(日本人はほとんどいませんが…)
このような行為は、その国のルールを守らず、ローカルを尊重すらしない態度の現れですね。ガイドを頼むときはしっかり現地でのルールに則って業務を行っているかを確認したほうがいいでしょう。

ソフト面にどれだけ投資できるかがポイント

旅で何を求めるかは人それぞれ。しかし、ガイドを付けなくてもOK、知らないことが多くても気にしないという方は、ここまで読んでくださらないと思います。

最近の世の中はツーリズムの世界だけでなく、目に見えるものばかりに心が奪われがちになってはいないでしょうか?

ビジネスクラスの飛行機に乗り、高級ホテルに泊まり、五つ星のレストラン。もちろんこれもクオリティの高い旅と言えます。しかし、目に見えるハード面だけでなく、ガイドサービスのようなソフト面からも、感動の深い高いクオリティの旅ができると提案いたします。

もちろんそれだけのコストはかかってしまいます。ただでさえ人件費の高いニュージーランドです。しかしかけたコスト以上の価値があると確信しています。特にニュージーランドはレベルの高いガイドが多い国。以前とある大手旅行会社の社長と食事をご一緒した時、ニュージーランドの現地ガイドは世界でもレベルが高いとお褒めの言葉をいただきました。

これからのツーリズムの形

このコロナショックで最も大きな影響を受けているひとつが私たちツーリズム業界。ポストコロナの時代に入ると、より一層旅行業の形態が変わってくるのは必至ですね。

このコロナ危機で人々が学ぶもののひとつは、「主体的に物事に取り組まないと生き残れないだと思っています。行先どうなるか不安で誰にも判らない世の中になりました。主体的に考え行動しなければいけないと、本能で感じる時代がやってくるはずです。

これから旅行をする方々も、それを受ける私たちツーリズム業界の者たちも、主体的にツーリズムに向かい合う時代がやってきます。旅行者も「旅行会社」を選ぶ時代ではなく、ガイドのような「人」を選ぶ時代がくるのではないでしょうか?

「あのガイドさんとの旅がしたいからあの国に行く」というような旅のカタチ

私たちツーリズム携わるものにとって、今はコロナの影響でもどかしい日々が続いていますが、次へのステップの準備期間と捉え、新しい旅のカタチとクオリティーをさらに高めるために、こんな時でも日々精進しないとけませんね。

だいぶん長い投稿となりました。最後まで読んでいただいてありがとうございます!

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